岩手競馬の黄金時代を支えた馬たち①
こんにちは。牝馬二冠を達成したアーモンドアイは秋華賞(三冠最終戦)に直行すると聞きました。力通りになれば三冠は必達だと思いますが、ステップレースを使わないのは多少不安ですね。
さて、今回は岩手競馬の黄金期を支えた馬たちを紹介していきたいと思います。
1.岩手競馬の概要
岩手競馬は、岩手県競馬組合により運営されている、地方競馬(JRAの運営ではない、地方公共団体により運営される競馬)の一つです。盛岡競馬場と水沢競馬場で競馬を行い、2017年の売上総額は285億6900万。盛岡ではJpnⅠ(GⅠとほぼ同義語)競走のマイルチャンピオンシップ南部杯が施行されています。
2016年に重賞競走(毎年決まった時期に行われる格の高いレース)に独自のグレード(M1〜M3)を導入しています(JRAのGⅠなどとの互換性はない)。
(出典:http://www.iwatekeiba.or.jp/guide/moriokakeiba/oro_01)
1996年に完成した盛岡競馬場は、1周1600mのダートコースと、1周1400mの芝コース(ターフコース)を持ちます。地方競馬では唯一芝コースを持つ競馬場ですが(地方は基本ダート)、芝レースはあまりありません。
盛岡の特徴は、スタートから800m近く直線を走るダート1600mコースと、最大高低差4.6mにもなる坂でしょう。とくにダート1600mコースは南部杯にも使われており、有名です。
盛岡の市街地からはやや離れた森のなかにあり、とてものどかな雰囲気が漂います。
<主な重賞競走>マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)、マーキュリーカップ(JpnⅢ)、クラスターカップ(JpnⅢ)、不来方賞(M1、3歳)、シアンモア記念(M1)
(出典:http://www.iwatekeiba.or.jp/guide/mizusawakeiba/mizu_01)
水沢競馬場は1周1200mのコースを有します。北上川のそばにあり、かつては多くの重賞競走が行われてきました(ダービーグランプリなど)。これは現在の盛岡競馬場ができる前の旧盛岡競馬場はコースが狭い上高低差が8.8mあり大レースが行えなかったからです(みちのく大賞典などは旧盛岡でも行われてきた)。
現在の盛岡競馬場ができてからは、順次レースが盛岡で開催されるようになりましたが、それでも歴史のある重賞の中には水沢で開催されるものもあります。
<主な重賞競走>岩手ダービーダイヤモンドカップ(M1、3歳)、ダービーグランプリ(M1、3歳)、留守杯日高賞(M1、牝馬)、一條記念みちのく大賞典(M1・岩手競馬春の総決算レース)、北上川大賞典(M2)、桐花賞(M1・岩手競馬の有馬記念、ファン投票で出走馬を選定)
2.岩手競馬の黄金期① 〜SG世代〜
※長文になります。ご注意ください。(画像は調べてください)
1986年、この世に生を受けた2頭の競走馬。後にこの2頭は、良きライバルとなって死闘を繰り広げることとなります。
2頭の馬の名は、スイフトセイダイとグレートホープ。2頭の初顔合わせは、89年5月のダイヤモンドカップ(3歳戦)。ここで勝利をあげたのはスイフトセイダイ。スイフトセイダイ(以下セイダイ)はここまで11戦9勝、グレートホープ(以下ホープ)はデビュー2戦目。セイダイはこの勝利で重賞3勝目を挙げた一方、グレートホープは屈辱の殿負け(ビリ)。巻き返しを図るホープでしたが、続く不来方賞(3歳戦)では1着セイダイの前に2着。ダービーグランプリでもセイダイの前に3着。
続く岩手の年末の総決算・桐花賞ではついに優勝し重賞初制覇。しかしセイダイは東京大賞典(大井競馬の年末総決算レース)に挑戦していました。結果は、南関東で今なお語り継がれる名牝ロジータの前に4馬身差をつけられ2着に敗れました(余談ですが、ロジータ記念という重賞競走が現在川崎競馬場で行われています)。鞍上の的場文男騎手は「下手に乗った」「あれは勝てたはずと今でも反省してる」と話しています。
年が明け1990年(両馬4歳)。セイダイとホープは赤松杯で対決。セイダイはまたしてもホープ(3着)を破って優勝。その後も桂樹杯、みちのく大賞典、すずらん賞、シアンモア記念とセイダイはホープに先着(ちなみに、すずらん賞・シアンモア記念ではセイダイは2着)。セイダイはその後東北サラブレッド大賞典に優勝し、満を持して再び大井へ乗り込みます。しかし、ダイコウガルダン(当時大井の最強馬)と熱戦を繰り広げたものの2戦していずれもダイコウガルダンに敗れ2着。一方ホープはセイダイ不在の中南部杯・北上川大賞典を優勝。桐花賞では2着でした。
翌年(両馬5歳)、セイダイはみちのく大賞典(ホープと同着)、赤松杯、シアンモア記念(いずれもホープを退ける)を制覇。セイダイは続いて、中山のオールカマー(当時GⅢ)をチョイス。このレースは地方の馬でも出走が可能で、門戸が広く開かれたレースでした。しかし勝ち馬とはタイムが0.5秒差だったものの5着に敗れました。続いては札幌(地方競馬。ホッカイドウ競馬がJRAの競馬場を借用)のブリーダーズゴールドカップを選択。こちらもJRAとの交流レースでした。結果はカミノクレッセ(距離・芝ダート・グレード問わず数々の好走歴を持つ)の前に大差をつけられ2着に完敗。その頃ホープは東北サラブレッド大賞典と北上川大賞典を制覇(南部杯は2着)しました。
年が明け1992年(両馬6歳)、ホープはこの年正月開催だった桐花賞を優勝。そして条件戦をはさみ、みちのく大賞典でセイダイと対決。これを勝ち、ついに因縁の対決で初勝利。シアンモア記念では2着。しかし東北サラブレッド大賞典優勝・南部杯4着をはさみ、北上川大賞典・桐花賞でセイダイを撃破しました。一方セイダイはこの年はホープ不在の赤松杯・桂樹杯とホープ2着のシアンモア記念を優勝。桐花賞では4着(2着は、のちに主役となる3歳馬モリユウプリンス)。
次の年からは、セイダイ・ホープともに年齢を重ねていたこともあり、セイダイは桂樹杯、ホープはオープン戦を勝つにとどまりました。
<両馬通算成績>
スイフトセイダイ:51戦27勝
主な勝鞍:
88年 南部駒賞、東北サラブレッド3歳チャンピオン
89年 やまびこ賞、ダイヤモンドカップ、不来方賞、ダービーグランプリ
90年 赤松杯、桂樹杯、みちのく大賞典、東北サラブレッド大賞典
91年 みちのく大賞典、赤松杯、シアンモア記念
92年 赤松杯、桂樹杯、シアンモア記念
93年 桂樹杯
グレートホープ:54戦24勝
主な勝鞍:
89年 桐花賞
91年 みちのく大賞典、北上川大賞典
92年 桐花賞(91年シーズン)、みちのく大賞典、東北サラブレッド大賞典、北上川大賞典、桐花賞
この2頭の対決はSG対決と呼ばれ、大きな注目を集めました。スイフトセイダイがまた勝つのか、それともグレートホープが雪辱を果たすのか。同期2頭の熱い対決は4シーズンに渡り続き、ファンを魅了しました。
また、スイフトセイダイは東北の意地を大井で見せました。他地区の馬がロジータやダイコウガルダンといった大井の強豪とぶつかったというのは、当時あまりありませんでした。大井のレースに出るには、所属先を離れ大井に転籍しなければならなかったからです。そのような手間を掛け、スイフトセイダイは東北代表として戦ったのです。
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。次回は岩手競馬史に残る1頭が登場します。
<参考>
②https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%97
③http://www.jbis.or.jp/horse/0000188091/